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神戸芸術工科大学、大阪商業大学で卒業式が開催されました。

3月22日(土)に神戸芸術工科大学、同25日(火)に大阪商業大学の卒業式(学位記授与式)が執り行われました。谷岡理事長は、神戸芸術工科大学で祝辞を、そして大阪商業大学では学長として式辞を述べられました。
                            

◇神戸芸術工科大学
デザインは何のためにあるのか。初代学長・吉武𣳾水先生は、「皆さんは単にものをデザインするんではないんです、必ずプロセスをデザインしなさい」と仰っていました。どんな形であれ原材料があり、それがものとして成り立ち、そして廃棄された後また巡回していく…という多くのプロセスも含めてデザインなんだ、という意味だと思います。「人生における皆さんのプロセスというのも、これから自分たちが社会との繋がりを作っていかなければいけないんだ」ということをいつも気持ちとして持っておいていただきたいと思います。
今年は阪神・淡路大震災からちょうど30年という節目にあたります。阪神高速が根っこから倒れ、多くの建物が倒壊し、火事を多く出し、「復興まで何年かかるのかな」と大変心配に思っておりました。そんな時、「まず震災マップを作ろうじゃないか」とすぐに立ち上がったのが、この神戸芸術工科大学の有志の先生方でした。近隣のいろいろな大学の

方々を集めて分担を決め、いろいろな作業をずっと続けてくれた、その中心になったのがこの神戸芸術工科大学でした。大変誇らしく思った覚えがあります。この節目を期に世の中へ出て行かれる皆さんは、震災の記憶はないと思いますが、少なくとも魂は持っていていただきたいと思います。
『卒展 カオス』を見て、本当に嬉しく思いました。これがこの大学の成果なんだな、と。皆さんが行うのは、カオス=混沌の中から何かを作り出し、いろんな人を幸せにすることです。今AIにやらせますと、漫画でも建築でも車でも絵でも音楽でも、そこそこ優れたものを作り出してくれると聞いています。でも皆さんはこの神戸芸術工科大学を卒業した人間として、そこに新たなプラスアルファを必ず加えていただきたいんです。そして世の中で活躍し、いつの日か皆さんの名前がこの大学に響いて戻ってくるように、そんな人間になっていただくことを心より念願しております。

◇大阪商業大学
世の中を見渡しますと、戦争を行っているところや紛争地帯、飢餓に苦しんでいるところ、人権問題を抱えている国…いろいろありますが、皆さんはこういう時代に世の中へ出ていきます。これからは大阪商業大学で培った根性と実力と知識、そして友人たちの力を駆使しながら、世の中で立派に戦っていってもらえるものと確信しております。こんな時だからこそ、皆さんは自分の哲学、生きる信念を貫き通してもらいたい。他の人がどう言おうと「ここはこうすべきだ」という意見を持ったら、臆せず発言する力を発揮してください。
皆さんは入学した時、どのような顔だったか。4年前の写真を引っ張り出して、今の自分と比べてみてください。今の面構えは、おそらく4年前からは考えられないほど深みを帯びているはずです。それが皆さんが培ってきた実力なんです。“やるかやらんか迷ったらやる”、失敗なんかいくらでもやりなさい。その失敗を自分の糧とし、力とし、また次のチャレ

ンジに繋げるんだと、それが皆さんの生き方なんだということを忘れないでおいていただきたい。
私は世の中というのはそもそも不公平なものであり、理不尽なものであるという前提で物事を進めるようにしています。必ず嫌な事は起こるし、嫌な人間もいるでしょう。どちらかといえば、嫌な事のほうがいい事よりも多いでしょう。でもそんな中で皆さんに思い出してほしいのは、私が口を酸っぱくして言っている「その嫌な人間と人生を取り替えたいのか」ということです。どんなに裕福でどんなに得をしていようと、こんな人間になるのは嫌だと思うはずです。そして皆さんが皆さん自身であることを誇りに思える、そういう時代であると考えています。理不尽であれ、不公平であれ、それはもうこの世の中の一部、社会の一部、人生の一部なんだということを必ず思い起こして、どちらかといえば他の人を許してあげるような生き方をしてほしいです。日本の文化というのは、お互いが感謝し合い、助け合い、そして優しさの中で培われていくものだということを知っておいてほしいと思います。